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滅びの前のシャングリラ / 凪良ゆう / 感想

こんにちは。

 

pelicanです。

 

凪良ゆうさんの「滅びの前のシャングリラ」を読んだので感想を書いてみます(ネタバレを含みます)。

 

概要

「明日死ねたら楽なのにとずっと夢見ていた。 なのに最期の最期になって、もう少し生きてみてもよかったと思っている」
一ヶ月後、小惑星が地球に衝突する。滅亡を前に荒廃していく世界の中で「人生をうまく生きられなかった」四人が、最期の時までをどう過ごすのか――。

 

1ヶ月後に小惑星が地球に衝突するという、少しSF的な設定で主に4人の登場人物の心情と各々の最後の過ごした方がとても面白かったです。

 

結局、小惑星は衝突して人類は滅亡する?のですが、この小説ではリアルに街が荒れていく様子や、無法地帯になって事故、暴力、略奪、殺人が頻繁に発生している描写がでてきました。秩序が無くなると人間もやっぱりこうなるんだろうな〜と思いつつも、この小説で考えることは、死の意味(=生きる意味)だと感じました。

 

登場人物は家庭環境に問題ありのメンバーばかりで、いじめられっ子の息子(高校生)、その息子の同級生、悲惨な家庭環境で育った母、ヤクザに足を突っ込みそうな40歳のチンピラの父。中々な濃いメンバーですが、1ヶ月後の平等な死を目前に「もう死にたい」と日頃から思っていた人たちが実際に死を前に生きる意味を探して死んでいきます。

 

蚊が何の意味もなく叩き潰されるように人が死ぬ事に意味もなく(=生きる意味もなく意味も無く)死んでいくと解釈する人、信仰宗教の教えによってより良い世界に変わるために死んでいく(死の意味=生きる意味を神という存在を認めて意味付けをする)と考える人、こっちの世界が終わったらあの世に行くだけだけだと考える人、パニックになって自殺する人など死ぬ意味(意味が無いも含めて)を考えて自分を必死に納得させるところがとても面白かったです。人は社会性の動物で社会に属する事が生きる意味としての一面もあり、世の中が荒れていく中でもインフラの整備やネット環境の整備などに従事し続ける人もいて、その気持ちもよく分かるきがしました。

 

現実でも病気で亡くなる方が大半ですが、何故自分がこんな病気にかからないといけないのか、それによって死ななければいけないのか、、、私もそうなれば考えて何か自分を納得させる理由をこじつけて死んでいくのかな〜とも思います。

 

生まれた場所や時代、周りの環境によって大きく左右され、お金持ちだったり、貧乏だったり、家庭内暴力があったり、いろんな人が生きています。「もう死にたい」とか「全部無くなればいいのに」とか「明日、会社爆発しないかな」なんて嫌な事があったり大きな失敗をしたり、さらに絶望的な状況で考えながら生きている人たちがいます。でも、これは小さな枠の中で生きている、言い換えるといろんな制約に縛られているから陥る状況でもある気がします。お金持ちになりたいとか、優雅な暮らしをしたいとか、周りから良く思われたいとか。人類滅亡を前にするとこんなことどうでもよくなって、今まで縛られてきた枠が外れて、外れても自分の中に残っているものが本当に大切なものでこれが生きる意味に繋がっているんだと思いました。

 

おわり。